バリエーション合戦 新国立劇場「ライモンダ」一昨日の2月12日、新国立劇場へ行った。ついこの間、マールイのライモンダを観たばかりで、今度は新国のライモンダ。あまり全幕で上演される事のないマイナーな作品なのに、ブームなのだろうか?…..って、単なる偶然だって。 さて、2006年に次ぐ再演で、当時もザハロワ+マトヴィエンコで観ている。背景と衣裳が凝っていた、という印象が強く、勢い、猫耳ちっくなヘッドピースとか、男性の額飾りに??となってしまったのを思い出す。今回も同じプロダクションだが、2度目なので、それほどびっくりしなかった。 ザハロワは相変わらず美しい。あれだけの長い手脚をコントロールして動かすのは至難の業だろう。ところどころでヒヤっとするような部分もあったが、その脚がしなって描くアラベスクのラインは、それだけで芸術品だ。彼女の踊りは好き嫌いが分かれるだろう。彼女はいい意味でも悪い意味でも、何をやっても「ザハロワ」だから。そのたぐい希な肢体は、どこにいても埋没することを許さない。日本人ダンサーに囲まれていると、調和という意味では、なにか異質なものすら感じるが、まるでバレエの奇跡が目の前にあるような、絶対的な主役として存在していた。 パートナーのマトヴィエンコも良かった。サポートも踊りも丁寧で、余裕があった。このライモンダでは、魂を揺さぶられるようなドラマチックな感動はなかったが、そもそも作品自体がドラマ性で感動させる要素に乏しいから、致し方ない。ノーブルな雰囲気と落ち着きのある踊りにマトヴィエンコの健在ぶりを再確認した感じだ。 ライモンダという作品は、全編を通して、主役ライモンダに6曲のバリエーションが振り付けられていて、主役を堪狽キるにはもってこいだ。どのバリエーションも、どちらかというと、跳んだり、回ったりといったテクニックを見せつける振りではなく、上品かつ繊細で、女性らしい美しいラインやたおやかさが楽しめる振り付けになっている。今回のザハロワが踊ったバリエーションでは3幕のピアノの1曲が圧巻だった。このバリエーションは、パ・ド・ブレが多用された振り付けで、ややもすれば退屈な1曲になりかねないのだが、短調で重厚なメロディーに負けない威厳と圧倒的な存在感があり、それでいて内側から光りを放っているような華やかさがあった。 その他にも、ライモンダの友人クレメンスとヘンリエット、1幕の夢の場、3幕のグラン・パに主役とは別にバリエーションがあり、言ってみれば、ライモンダの5曲も含め、全幕を通してバリエーションのオンパレード。それぞれのャ潟Xトも良かったが、特に1幕・夢の場の厚木三杏さんと3幕の西山裕子さんが印象に残った。三杏さんはポーズ毎に確実なバランスがあり、まったくブレがなかった。裕子さんはハンガリー風の音楽に良くのって、溌剌とした踊りに好感が持てた。 物足りなかったのが、森田健太郎さんのアブデラクマン。主役ジャンの敵役で、ジャンに相対する存在感や魅力が欲しいところ。私の個人的な見解かもしれないが、アブデラクマンは男臭くて野性的な反面、情熱的でセクシーな男性で、その動きはしなやかな豹のようなイメージだ。健太郎さんのアブデラクマンはバリエーションでも濃さや柔らかさが足りない感じで、なんだかチンピラの親分(失礼!)みたいに見えてしまった。アラジンの魔術師を好演したマイレンあたりに適役なのではと思うのだけど、どんなもんだろうか…..しばらく再演はなさそうだけど。 投稿ナビゲーション ピンクのチュチュfrom Germany