踊る人形 レニングラード国立バレエ「白鳥の湖」“1月24日は、神奈川県民ホールにレニングラード国立バレエの「白鳥の湖」を観に行った。前日には名古屋で、翌々日には長崎で公演をするというハードスケジュールの中、今回の来日で東京近郊で開催される公演としては最後となる。配役はオデット=オディールにイリーナ・ペレン、ジークフリード王子にアンドレイ・ヤフニューク、ロットバルトにマラト・シュミウノフ。ペレンは長い手足に華やかな美人顔というお人形さんのような容姿。恵まれているといえば恵まれているのだが、どうもしっくりとこないのは何故だろう・・・??このバレエ団だったら、シェスタコワ贔屓の私なので、シェスタコワの情感あふれる、魂を揺さぶるような個性が好みなのだ。ペレンはどうもお人形さんが踊っているようで入り込めない。美しい容姿なのに、脚の向きだろか? ラインだろうか? 具体的にどう、と阜サできないのだが、独特の形でどうも好きになれない。肩から腕の動き、首の使い方にも癖があって、もちろんそれが彼女の個性ではあるのだが、なんとなくしっくりこない。それでも数年前に観た全幕の白鳥の時より、テクニックが数段安定した。オディールのバリエーションでは、冒頭のピルエットでトリプルからアチチュードターンに持っていったし、グラン・フェッテでも果敢にダブルを入れていた。(でも肩が上がるんだよな….)あれだけ長い手足をコントロールして回転するのは本当に難しいことだ。ここ数年の彼女の成長ぶりには素直に感心する。今回の来日公演では、ルジマドフが出演する最後の全幕作品『バヤデルカ』で2日間とも彼女が主役ニキヤを務めていたところをみると、バレエ団としてもこれからの看板一押しはシェスタコワではなく、ペレンということなのだろう。(既にここ数年はそうだったかも…)それに相応しい堂々としたプリマに成長したことには違いない。こればっかりは好みの問題だが、個人的にはもう少しシェスタコワに頑張ってほしいところだ。 そんなわけで、主役のペレンに関しては、大きな感動はなかった。2幕で王子と恋に落ちるところ、3幕で王子を誘惑するところ、一概に綺麗でお人形さんが踊ってるみたい、という印象。このバレエ団の演出は、オデットとジークフリードが死を覚悟して愛を貫く、というもので、ジークフリードとロットバルトが直接戦う事はない。ロットバルトに妨害されながらも、恋人達は離れることを拒み、共に湖に沈んだ瞬間、ロットバルトも滅び、白鳥にされた乙女たちにかけられた呪いが解ける、というものだが、そこまでの強い愛情が感じられず、説得力に欠ける感じ。いや、とにかく好みの問題なので、どこからみても絵に描いたようなバレリーナ、ペレンを愛するファンは多いに違いない。 ペレンの印象がお人形さんなので、全体的にストーリーを訴えかけてくるようなインパクトが薄い。自然にジークフリード王子も、どちらかというとサクッとさっぱり踊った感じではあったが、伸びやかな四肢を持つ恵まれたプロポーションのヤフニュークは、力を入れすぎず、あくまでもノーブルで良かった。王子にこれでもか、とテクニックを誇示されてもちょっと引ける。湖で出会った乙女に愛を誓ったくせに、翌日には別人を勘違いしてしまうちょっと抜けてる王子には調度良いかも知れない。1幕のパ・ド・トロワの男性=アントン・プロームが、しっかりテクニックを魅せてくれていた反面、若干重い感じがしたので、ヤフニュークの軽やかさとノーブルさとの対比が面白かった。 気に入ったのはロットバルトのシュミウノフ。長身で長い脚を持つ彼のロットバルトは、いるだけで存在感があるし、手を抜かない演技は2幕、3幕、4幕とそれぞれの場面で””いい仕事””をしていた。3幕のグラン・パ・ド・ドゥでもオディールと王子にちょこちょことちょっかいを出すのだが、邪魔すぎず、良いスパイスになっていた。彼は別キャストではジークフリードにも配役されている。正統な王子からキャラクテールまで幅広くこなせるというのは、やはりバレエ団きっての芸達者なのだろう。今後も彼には注目したい。” 投稿ナビゲーション ブルーのチュニックスワニルダのチュチュ