激舞 爆踊

新国立劇場「アンナ・カレーニナ」
昨日は新国立劇場へ「アンナ・カレーニナ」を観に行った。

ロシアに自身のバレエ団を持つボリス・エイフマンの作品で、2005年が初演。もちろん初見だ。

メイン・キャストは、エイフマンの作品を数多く演じているゲストが固める。アンナにニーナ・ズミエヴェッツ、カレーニンにセルゲイ・ヴォロブーエフ、ヴロンスキーにオレグ・カブイシェフ。こういった作品は、(特に初めて観る場合は)お抱えのダンサーで観るのが賢明、と思っているので、迷わずこのキャストを選んだ。

シンプルな舞台装置にスタイリッシュな衣裳、すばやい展開、中劇場ならではの臨場感があいまって、上演時間2時間(休憩25分)はあっという間に過ぎてしまった。

原作はトルストイの大作だが、この2幕もののバレエでは、登場人物をアンナとその夫カレーニン、アンナの愛人であるヴロンスキーに絞り込み(ヴロンスキーの婚約者であるキティは冒頭にちょこっと出てくるだけなので、メインは正にこの3人と言えるだろう)、3人の間に流れる葛藤や、激しい感情のぶつかり合いが繰り広げられていく。

何しろ、踊りが激しい。フィギュアスケートのアイスダンスのようなアクロバティックなリフト、ダイナミックで強烈な個性を見せるズミエヴェッツの動き。この人の爆発的なエネルギーと驚異的な身体迫ヘには目を見張る。一瞬たりとも目が離せない。新国立劇場のダンサーが務めるコール・ド・バレエも、とにかく動きっぱなし。シーンによって、上流階級の人々だったり、カーニバルの客人だったり、兵士だったり、情欲や機関車を連想させるシンボリックな存在だったり、と、その度に衣裳を替え、時にはポアントを履き替えて登場しているのだから、一度幕が上がったら、舞台上で踊っているか、裏で着替えているか、のどちらかなんじゃないかと思うぐらい、入れ替わり立ち替わり、とにかく踊っている。コール・ド・バレエと言っても、こちらも激しい振りばかりで、ャ潟Xトが多数投入されていて、なんとも贅沢な配役。観ているこっちは、ただただ圧倒されるばかりだった。

いかにも””バレエ””な『白鳥の湖』や『くるみ割り人形』ではないので、席数の少ない中劇場でも、客席の入りは7割程度のようだった。舞台装置や衣裳を制作して日本初演だから、今回の公演日程で元がとれるとは思えないが、これこそ””国立””で挑戦してもらいたいプロダクションだ。再演があれば、是非また脚を運びたい。”