キトリ

間違いなく誰にもわかるまいが…
1296208688モチーフにガラスビーズやラインストーンを使って刺繍を入れていく、この時、ビーズの色や大きさは、今までの経験から、バランスや扱いやすさを考えてチョイスしている。

金のモチーフの上に金のビーズでは、立体的にはなっても、色が溶けてしまって目立たないので、ランダムな色が入ったシルバー系のガラスビーズを使うことにした。最初、何の気なしにモチーフに合わせた金茶の糸で縫い始めたのだが、ビーズから透ける糸の色とモチーフの色があまりに似ていて、なんだかビーズがぼんやりしているように感じた。

そのまま数カ所、ビーズを付けているうちに、やはり、その「ぼやけ感」が気になってきた。
試しに、反対側を黒の糸で縫いつけてみたら、こちらの方が、モチーフとのコントラストが出て、良いように思えてきた。

目の前で、じっと見比べれば違いがわかるものの、舞台の上で、しかも踊っているダンサーの衣裳についている数ミリのガラスビーズの芯糸の色など、拘ったところで、まずわかる観客はいないだろう。それでもやはり、黒の方が良いと感じた以上、既に仕上がっていた金茶の刺繍を解かずにはいられない。

こういう性格だから、この仕事をやっているのか、この仕事をやっていたから、こうなったのか…..。これもやっぱり、誰にもわかるまい。