武者震い

ちょっと、大変な仕事を受けた。20年以上前のチュチュと同じものを作って欲しい、というオーダー。8人分=8着の在庫があるものの、再演の配役の都合で8名のアンサンブルとは別にソリスト用1着が必要になって…。9名のダンサーに対し、衣裳が8着しかない、気がつけば公演初日は来月に差し迫っている状況、あちこちの工房に製作を打診したものの、納期が近過ぎると言う理由で引き受けてくれるところがなく…と、私のところへは“ネットで見つけて”と電話がかかってきたのが先週の事。

オリジナルは、バレエ衣裳業界のレジェンド=大井昌子先生作である。現物のチュチュを見せてもらい、予想していたものの、構造も仕様も独自な作り、細かく緻密な飾り…溜め息が出るクオリティだ。全く同じモノをコピーするのは無理だと正直に伝えた。そもそも、20年以上前となると、生地やブレードといった素材が廃盤になっている可能性も高い。聞けば、生地は当時、イタリアから取り寄せたのだと言う。同じ材料がない、パターンや仕様書がある訳でもない、時間もない、のナイナイづくし。それでも引き受けることにしたのは、大井先生の衣裳の現物を間近に見ながら、少しでも近いモノを作る、という事が、興味深く、自分にとっても勉強になる貴重な経験だと思うからだった。

そして、進行中だったタリスマンの衣裳を急ピッチで仕上げるのと並行して、大井先生のチュチュの材料の分析、用尺の計算、手配、発注を進めてきた。オリジナルと同じモノが入手できない場合は、似たモノで代用するしか無い。似たモノを探す時間も惜しく、迷ってる暇はないので、決断は潔く。

まだ全て、ではないが、概ねの材料は揃った…。できるのか? やるっきゃない、全力で! なんだか、ワクワクする。これが武者震いか。