This is it

MJとは何者だったのか
仕事で名古屋にやってきたのだが、ちょっとした時間が空いたので、しばしその時間の使い方を考えた。こんな時、時間が合うなら、映画は手頃だ。独りでも楽しめるし、こんな時でもないと、わざわざ映画館へ足を運ぶこともしないから、ちょうどいいチャンスだ。

とはいえ、ホラー映画やSF映画にはあまり興味がない。残念ながら、このお正月に封切りになった話題の映画には、どうも食指が動かず、ネットで調べていたら、マイケル・ジャクャ唐フ「This is it」が目に留まった。なんだ、これ、まだやってたんだ…..。

MJについては、もちろん、知らないわけではないが、ポップスには疎いので、詳しいわけでもない。ただ、一人のアーティストとして、世界中を興奮の坩堝に落とすことができる怪物、というイメージがあるだけだった。

公開当時は入場制限がかかるほどだったというが、定員160名ほどの映画館に30名程度の観客、と客席はがら空き。それだけに、特等席でゆっくりと観る事ができた。

彼の衝撃的な死後、そのリハーサル映像から作られたというドキュメンタリー。ファンにとっては、フィルムの中で彼が永遠に生き続けている、そんな風に感じさせるフィルムに仕上がっている。
私はというと、もともと大ファン、というわけではないので、淡々と観ていたが、それでも彼の類稀な感性と繊細さが伝わってきた。彼だけでなく、スタッフやダンサー、彼と一緒に仕事をする関係者全員が、彼の人間性を愛し、尊敬し、ひとつのショーを作り上げていこうとするエネルギーに満ち溢れていた。彼らのモチベーションはお金でも名誉でもなく、MJのショーを作り上げていく一員であることに誇りを持ち、自分たちの持ちえる最大の力でその目的を達成しようとするところにある。その頂点にいるのがMJだった。

こんな人がいたんだ….。というのが率直な感想だ。そのアイディアもスケールも桁が違うというか、神がかっているというか。もし、あの衝撃的な死がなければ、あのショーは嵐闥ハりに開催され、それはそれで世界中の話題をかっさらったのだろう。でも、そうであったとしたら、こんな舞台裏のフィルムは公開されなかったに違いない。私にとっては、この映画のお蔭で初めてMJを見たようなものだ。彼はそうやって、これからも世界中の人々の心の中に生きき続けていくのだろう。