新国立劇場「マノン」 ムーディな舞台 昨日は新国立劇場へ「マノン」を観に行った。個人的にはマスネの切なくも美しい音楽と、マクミランの情熱的でドラマチックな振付が大好きな作品だけれど、この作品をレパートリーにしているバレエ団は日本にはほとんどないし、新国でも9年ぶりの上演だったので、行く前からワクワク感は最高潮…..。 キャストは、ヒューストンバレエからのゲストで、マノンにサラ・ウェッブ、デ・グリューにはコナー・ウォルシュ。安定感のあるウォルシュと、小柄でキュートなウェッブのカップルバランスがいい。ウォルシュは、サポートも踊りも丁寧で、かつ、終始マノンを意識した演技が秀逸。アクロバティックな振りが連続するマクミランの振りを、ただこなすだけではなく、ちゃんとドラマを演じてくれていて、すごく好感が持てた。ウェッブもきちん、きちんとしっかり踊ってくれるという点では、安心して見ていられるのだけれど、マノンだと、もうちょっと危うさも欲しくなる。観客側のワガママっちゃーワガママだけど。 脇を固めるのは、ムッシュGMにマイレン・トレウバエフ、レスコーに古川和則さん、レスコーの愛人に湯川麻美子さん。マイレンは濃い演技で好色なエロ紳士を熱演、湯川さんは、どこにいても存在感があって、とにかく目を引く。天性のオーラなのか。ちょっとクセのある今回の役どころではその本領を発揮、優等生タイプが多い新国で貴重なダンサーだとつくづく実感した。 レスコーの古川さんも、悪くなかったけれど、なんとなく悪さが足りないような。レスコーは妹を売るのも厭わない根っからのワルで、いざこざの果てに殺されてしまうんだけれど、それも致し方無いか、と思わせるぐらいで調度良いと思う。古川さんの人の良さが邪魔してしまったのかも。 これは、看守役の厚地康雄さんにも思った。看守なんて、レスコー以上に嫌なやつ、唾を吐きたくなるようなゲス野郎なんだけど、そこまでなりきれていない。ちょっと日本人には向かない役どころなんだろう。 舞台装置と衣裳は9年前から一新、重厚感があった以前のプロダクションと比べると、軽くなった感じ。ロイヤルの重厚な雰囲気もよかったけれど、今回の軽さと明るさは細くて小柄な日本人が踊る舞台には、ちょうど良いと印象だった。 娼婦や悪党、エロ紳士、と登場人物や舞台背景を考えると、日本人が阜サするのには苦手な分野だと思われるのに、ダンサーたちは隅々でもよく演技をしていて、一昔前のシャイで奥ゆかしい日本人ダンサーからは一皮も二皮も向けた感じ。排他的でどこか気怠い空気が漂う「マノン」の全幕を、高いクオリティーで観られるようになった事に、日本のバレエとダンサー達の進化と発展を感じた。再演があったら、また脚を運びたい。 投稿ナビゲーション オディールブルーのロマンチックチュチュ