世界バレエフェスティバル ガラ

忘備録
“3年に1回開催される『世界バレエフェスティバル』。第一線で活躍するダンサーが集まり、プログラムによって様々な表情を魅せてくれるのが楽しみで、ここ何回か、A・Bプロを観ていたけど、今年はガラ1本。会場で購入したプログラムをめくりながら、「コレもアレも観てみたかった~」と思いつつ、ガラだけでも観られる幸せを感じながら着席。

あの感動を思い出したい、自分のための忘備録。

「ドリーブ組曲」
リュドミラ・コノヴァロワ/マチアス・エイマン
伸びやかで正確な踊りが好印象。この作品の特徴的な逆回りのマネージでは、空中で静止したかのような一瞬があり、溌剌としていて幕開けに相応しいと感じた。衣裳はルテステュデザインのオリジナルを継承してるんだけど、カットラインやスカートのシルエットがちょっと野暮ったい感じだった。お洒落になるか、野暮ったくなるか、は本当に数センチの違いなんだよな。

「三人姉妹」
サラ・ラム/ワディム・ムンタギロフ
サラのガーリーな雰囲気が、やるせない悲劇的な空気を更に盛り上げていて、引き込まれた。2人ともとても良かったけど、ムンタギロフは、王子様も観たかった。いや、だから、他のプロも行かないとダメってことなんでしょうけど。

「雨」
ヤーナ・サレンコ/ダニール・シムキン
身体能力の高い2人が、それを余すところ無く発揮した超絶技巧満載のコンテ。サレンコはキトリもあるけど、シムキンはこれ1曲だけ。うーむ。やっぱり笑顔で跳んでるシムキンが観たいのは私だけ? あるいはシムキンがこういう路線を目指しているのかも知れないけど。

「椿姫」より第一幕のパ・ド・ドゥ
アリア・アイシュヴァルト/アレクサンドル・リアブコ
一気に持って行かれました。2人の目線の使い方、表情の一つ一つに、マルグリットの複雑な心理とアルマンの一途な思いが伝わってきて、流れるような動きは音楽と融合しているかのよう。コレを観るためだけでも来て良かったと思えたほど。

「ヌアージュ」
ディアナ・ビシニョーワ/マルセロ・ゴメス
ドビュッシーの音楽+キリアンの振付けは、よどみなくヌルヌルとした動きが、なんとも不思議で、確かに「雲」って感じ。ヴィシニョーワは適役な印象。

「カルメン組曲」
ヴィエングセイ・ヴァルデス/ダニーラ・コルスンツェフ
アロンソの振り付けを同じキューバ人のヴァルデスが演じるにあたり、衣裳や髪型もアロンソのオリジナルを踏襲したんだと思うけど、体型がずんぐりむっくりに見えてしまったのが残念。

「ル・パルク」
イザベル・ゲラン/マニュエル・ルグリ
初見の時は衝撃的だったけれど、個人的には苦手で、その世界観に陶酔することができない作品。ただ、ルグリもゲランも、その御年を考えると、やっぱり凄い。歳を重ね、身体能力は衰えてなお、身体で表現できることを追求していく姿勢に感動。

「さすらう若者の歌」
オスカー・シャコン/フリーデマン・フォーゲル
縦に並ぶとフォーゲルにすっかり隠れてしまうシャコン。その体格差も個性として許容できる作品なんだけど、動きの質の違い、それもOKなんだろうか? シャコンは作品にぴったりなベジャールダンサーなんだけど、フォーゲルはクラシカルで伸びやか、あくまでも爽やかで、なんか、こう、人間臭さがない。若者の苦悩を表現しているのだから、そのちぐはぐさも含めて””味””なのかな…..。

「ウロボロス」
シルヴィア・アッツォーニ/アレクサンドル・リアブコ
仮面をつけ、機械仕掛け人形のような動きから始まる不思議な作品。マルグリットに恋した一途なアルマンから一転、リアブコの引き出しの多さにびっくり。ただ、男性のジャケット、女性のオーバードレス共に「あ、これ、脱ぐんだろうな」と最初からわかってしまったので、実際にそうなった時の意外性はなかった。

「白鳥の湖」より””黒鳥のパ・ド・ドゥ””
マリーヤ・アレクサンドロワ/ウラディスラフ・ラントラートフ
アレクサンドロワ姐さん、他の追随を許さない貫禄ぶり。彼女も身体能力のピークは過ぎているけど、頭から王子をねじ伏せて支配していくような、圧倒的な存在感に脱帽。ラントラートフの王子は柔らかいプリエや優雅なジャンプであくまでもノーブル。『そうよ、ジークフリードはオディールにやられちゃうのよ』と納得しちゃう一作。

「ハムレット」
アンナ・ラウデール/エドウィン・レヴァツォフ
現代的な設定で、旅立たなければ行けない青年と別れを受け入れなければいけない少女を描いている(と思う)んだけど、毎回、レトロな衣裳や人形や花冠を使った演出に違和感を感じてしまう。ノイマイヤー先生、センスがなくてゴメンナサイ。

「シェエラザード」
上野水香/イーゴリ・ゼレンスキー
どうしてこの演目なんだろう? ゾベイダってエロスを感じさせる女性じゃないと作品にならないと思うんだけど、水香さんとゼレンスキーでは艶っぽさも妖しげなエロスも感じられない…..。

「ヴォヤージュ」
ウラジミール・マラーホフ
今の彼ができることをできる範囲で頑張ってたよね。

「ジゼル」
アリーナ・コジョカル/ヨハン・コボー
この二人が踊ると、愛やら信頼やら、呼吸やら、とにかく隅々までラブラブで溢れてる。もうちょっと観ていたかった古典らしい古典。

「タンゴ」
ウリヤーナ・ロパートキナ
ロパートキナの長い脚がキレッキレに動く。クールでシャープでクレバーなタンゴ。これまた、コレが観られただけでも上野に行った甲斐があったという、至極の時間を味わわせてもらいました。

「椿姫」より、第3幕のパ・ド・ドゥ
オレリー・デュポン/エルヴェ・モロー
オペラ座を引退したオレリーだけど、「まだいけそう」と思わせてくれた。人間的な温かみを感じるマルグリット。モローには後半、ちょっと疲れが見えたけど、決して小柄ではない彼女相手に、高難度リフト満載のこの作品は誰がやってもしんどいだろう、最後までよくやりきってくれました。

「ドン・キホーテ」
ヤーナ・サレンコ/スティーブン・マックレー
マックレーのエネルギー炸裂、サレンコはダイナミックというよりはバランス技で見せるキュートなキトリ。衣裳がオフホワイトにゴールドのデコレーション、ヘッドピースにティアラという出で立ちは、ドン・キとしてどうなの?と思ったけど、ロイヤルのプロダクションのものを持ってきたらしい。二人共ブロンドで、頭から爪先まで白くて、ぱっと見はオーロラ。好みの問題だけど、サレンコは赤系の方が良かった気がする。

この後、ファニーガラが続き、14時の開演から続こと5時間の長丁場が終了。全体の印象として、ベテランの好演が印象に残った反面、台風の目的な新人さんが乏しかったので、3年後は新人さんに期待したい。”