とにかく楽しいオペレッタ!

新国立劇場「こうもり」

12335439051月31日、街は氷雨の降る寒い天気の中、新国立劇場へ向かった。この日はオペレッタ「こうもり」が上演されたのだ。

バレエに比べると、オペラやオペレッタはを観る機会は少ない。それでも、「こうもり」は大好きな演目であることと、新国は他と比べてチケットが安いことで、このプロダクションを見るのは2回目だ。

「こうもり」は歌のみならず、台詞が多く、ストーリーの進行には、演劇的な要素も大きく影響している。版によって、台詞回しや挿入される曲などにも特徴があり、どのプロダクションもわくわくさせてくれる。例えば、新国の前回公演の時は、アデーレとイーダが日本人だったので、2人の会話は日本語になっていた。観客は日本人なんだし、台詞回しを日本語にしてくれれば字幕を追う必要がない。これは日本人キャストならではの演出だった。

さて、今回は、演出や美術は前回と同じだが、キャストが総入れ替えになっていた。主要なキャストのうち、アルフレードとブリント博士、イーダが日本人だったが、この3人はほとんど直接絡む事はないので、ところどころに日本語のギャグが入りつつも(これは外国人キャストもこなす)基本的には、全編ドイツ語で進行した。

バレエ公演だと、ついついお気に入りのダンサーに贔屓目が入ったり、逆にテクニックや演出に評価的になってしまったりしがちだが、オペレッタは詳しくない分、先入観なく楽しめる。
「こうもり」は最初から最後まで、次から次へとドタバタが尽きない作品で、台詞がドイツ語だろうが何だろうが、まったく気にならずに楽しめる。
アイゼンシュタインとフランクの中年不良紳士のやりとりがとても面白い。燕尾服を着た紳士がずっこけているギャップが、それだけでおかしい。

それにしても皆、芸達者だ。いくら字幕があるとは言え、ドイツ語で(キャストによっては当然、ドイツ語を母国語としない外国人が演じている)歌い、台詞を言って、日本人の観客を笑わせているのだから。いくら台本や演出が良くても、間や空気を読んで演じていかなければ、到底観客の心をつかむことはできない。3幕のフロッシュの長い独白は、やはりドイツ語だが、これがまた笑えるのだ。観客は、彼の台詞を直に理解することはできないのに、その声のトーンや、印象、しぐさ、に笑ってしまう。笑いのツボは万国共通ということか。
余談になるが、以前にTV放映されていたイギリスの劇場の版では、ここは英語になっていた。この役は歌うことがないので、歌手ではなく、役者が演じるのが普通だが、ここを日本人の役者が日本語で演る、というのは難しいのだろうか? それもまた、見てみたいものだ。

全編にわたる、どこかで耳にしている馴染み深いシュトラウスの音楽、華やかな歌やバレエ(2幕ではロザリンデのチャルダッシュの後にポルカ「ハンガリー万歳!」が挿入され、東京シティバレエ団のダンサーが踊った)、随所に散りばめられたギャグやウィットのバランスが絶妙で、最初から最後まで、とにかく楽しめた。まるでシャンパンを飲んでほろ酔い気分になったかのよう。再演されたらまた脚を運ぶことになりそうだ。