万事休す

プラスチック片が教えてくれたこと
工房で使っているもののひとつに、大型の回転式ハンガーがある。類似品も見かけるが、ここで使用しているのは元祖のホクト社製のもの。耐久性や回転のスムーズさに定評があり、発売以来17年間、同社の看板商品であり、ロングセラー商品となっている。

購入したのは、かれこれ10年以上前になろうか。この頃、動かしていると、何かプラスチック片の様なものがポロポロと落ちてくるようになった。
よく見てみると、キャスターの一部が剥がれ落ちてしまっていた。加重のかかる部分だし、さすがに10年も経つと劣化してしまうのだろう。全てのキャスターが同じように剥がれてていたので、キャスターの寿命と考えられる。それ以外は問題なく使えているのだから、キャスターの交換で解決しそうだ。

そこで、先日、キャスターの1個を持参して販売店へ行った。販売店とは、かの有名な「カタログハウス」だ。同社は「長持ちすること」「いつでも修理できること」等をモットーに、それにかなった商品を販売しているので、部品の交換についても、販売店である同社を通した方が良いと思ったからだ。

店頭で、キャスターを見せて事のあらましを説明したところ、
「修理、交換の詳細について、メーカーから直接ファクシミリでご連絡させます。」という返事だった。で、あれば、ファックスは直接工房へ送信してもらうよう、工房のファクシミリ番号を告げ、店を出た。これが1月25日のことだった。

週が明けた1月27日、仕事を終えて自宅へ戻ってみると、ファックス受信のランプが点いていた。自宅のファックスは内容をウィンドウで確認した後、必要に応じて印字できるようになっているのだが、ここのところ調子が悪く、印字しようとするとエラーになってしまう。
どうやら例のキャスターの件らしいが、ウィンドウでは文字が小さすぎて内容が確認できない。
「だから、工房に送信してくれって言ったのに。」と思わずため息をついてしまった。

その週は、納期間際の衣裳を次々と製作しなければならず、その後、販売店へ再度問い合わせをするところまで、頭も手も回っていなかった。やっと土曜日になって、カタログハウスのwebサイト経由で、工房へファックスを送信しなおしてくれるようにメールを入れたところ、カタログハウスからはお詫びとともに、ファクシミリを再送するようにメーカーへ指示した旨の返事が来た。

更に週が明けた今週、月曜日(=つまり昨日)になってもファクシミリは届いていなかった。
それで今日、カタログハウスへ電話を入れてみたのだ。
電話の対応は大変丁寧で、度重なる問い合わせに対して、未だに回答できていないことを陳謝し、今度こそ、メーカーより工房へファクシミリを送信させます、ということで話は終わった。

受話器を置いてから10分ぐらい経ったところで、電話が鳴った。「カタログハウス」の担当者からだった。
「実は、この不況のあおりで、昨日、このメーカーが倒産してしまいました。当社にも今日になって、連絡が入ったところです。現時点では、お客様のご自宅へメーカーからファクシミリが送信されたかどうかも確認がとれない状況です。このような場合、メーカーに残っている商品や部品は差し押さえとなるので、今後、当社より交換部品を提供することは、かなり難しいと思われます。」

え””っ!!!!!
いや、だって、その、自宅のファクシミリには確かに受信があったし、はっきり見えなかったけど、金額で4000円とかなんとかは読めたんですよ。それがキャスター1個の値段なのか、いくつかセット値段なのか、工賃でも含んでいるのか、詳細はわからなかったけど、少なくとも自宅にファックスが来た時点で、メーカーは何らかの金額侮ヲをしていたワケなんですが、それが、1週間後に倒産っ!! ですかっ!!

狐に鼻をつままれた様な気分で、試しに「ホクト 回転式ハンガー」で検索してみた。すると、ちゃんと、ホクト社のwebサイトにヒットした。しかし、哀しいかな、そこに侮ヲされているお客様専用フリーダイヤルに電話してもコールが続くばかりで、誰も出てはくれなかった。

100年に一度の不景気と言われている今の日本。リストラや赤字決算など、日々、聞こえてくるニュースも暗いものばかりだ。それを目の当たりにした””キャスター事件””となってしまった。