精緻+確実=精確

新国立劇場「Ballet the Chic」
1238390181昨日のブログに一昨日の新国立劇場小劇場での公演の事を取り上げた。実はこの日、マチネを小劇場で、ャ純撃???場で観るというハシゴをしたのだった。

中劇場でのャ純撃ヘお膝元、新国立劇場バレエ団。小粋でスタイリッシュな作品のアャ鴻Wーとのことで、ジョージ・バランシンの「セレナーデ」、井口裕之さんの「空間の鳥」、ナチョ・ドゥアトの「ボル・ヴォス・ムエロ」、トワイラ・サープの「プッシュ・カムズ・トゥ・ショヴ」の4本立てだ。

最初の作品は「セレナーデ」。
幕が開くと、右手を高く上げた女性ダンサー達が、青白い照明に照らされて整然と立っている。音楽と共に動き始める彼女たちは、手や首の角度、目線、何から何まで、ぴったりと揃い、まるで一人のダンサーが分身して重なっているような、透明感と精確さが見事だった。海外のコンクール等では、時として、高い技術があっても、個性やスター性に欠ける、と言われてしまう日本人だが、一人一人が生真面目で素直、真摯にレッスンに励む日本人の特性が集結したようなコールド・バレエは、バランシン作品の本家であるニューヨーク・シティ・バレエよりも良かったのではないだろうか。
息を飲むような、コールド・バレエのぴったりと揃った動きや、そのフォーメーションの変化を楽しんだのはもちろん、女性2名、男性2名のャ潟Xトのうち、ジャンプが多いパートを踊った寺島まゆみさんの、ふわりと軽やかなジャンプと、溌剌とした撫?ヘ特に印象に残った。

続いて上演されたのは「空間の鳥」。新国立劇場のダンサー井口裕之さんの振り付けによる作品。
上半身裸に赤い袴のようなスカートを身につけた男性ダンサー12名による群舞で、スカートをたくし上げたり、ウエストに挟むなど、小道具のように使った動きも。とても激しく、ダイナミックで力強い男性的な振りで、ダンサーにしてみれば相当な体力を要する作品だろう。今までの新国立劇場のレパートリーにはあまりなかったスタイルだが、男性中心の(それも上半身裸の)群舞という点でベジャールの作品とかぶるし、ホリゾントに配された1本の赤い線の背景、白い大きな布を使ったマジックはビントレーの「カルミナ・ブラーナ」を連想させる。新作、としては振り付けに既視感が否めなかった。

3作品目は「ボル・ヴォス・ムエロ」。スペインの振付家ナチョ・ドゥアトの作品は、新旧のスタイルが融合したような、不思議な空気を持っている。音楽は15~16世紀のスペインの音楽で、衣裳もその流れをくんだようなハイウエスト切り替えのドレスや男性のパフスリーブなど、時代がかったテイストが入っている。女性はポアントを履かず、うずくまったり、はじけたり、クラシックバレエの本来のポジションを超えた自由なムーブメントが音楽に見事に融合し、まったく飽きることがない。
この作品は以前にも上演しているので、ダンサー達も良く作品を理解しているのだろう。湯川麻美子さん、本島美和さんが特によかった。言葉で阜サすることが難しくて、もどかしいばかりだが、中世の絵画の世界に飛び込んでしまったような、不思議な感覚にとらわれ、なにか違う空気を吸っているような感じがした。

最後は「プッシュ・カムズ・トゥ・ショヴ」。
サープの作品はお洒落でユーモアとセンスに溢れていると聞いていたので、楽しみにしていたのだが、残念ながら、ちょと期待はずれな感じ。バリシニコフの為に振り付けられたというこの作品、そうか、ミーシャだったら、そりゃあ、楽しめただろう。ミーシャだったら、テクニックはもちろん、絶妙な間の使い方、観客を弄ぶ茶目っ気があって、お洒落で小粋な作品になっただろうと、想像に難くない。この主役をやったのは福田血痰ウんだが、彼が悪い、というより、作品のニュアンスやセンスそのものが、優等生タイプの新国立劇場ダンサーには向いていないように思う。
レトロな衣裳は作品のテーマに沿っているのかもしれないが、観ている方にはちょっと野暮ったいというか、古くさいというか。舞台の作りもホリゾントのみので、照明にも何ら工夫がなく、全体として陳腐な感じがした。