くったくのない笑顔と若さ溢れるエネルギー パリ・オペラ座バレエ学校 日本公演大型連休とはいえ、カレンダー通りであれば、今週はど真ん中の水曜日のみが休日。こんな日に遠出をするのはあまり得策ではなかろう、と買っておいたのが「パリ・オペラ座バレエ学校日本公演」のチケット。昨日は、急な錐桙ンで、発送しなければならなかった荷物があったため、午前中は出勤して業務を片付け、午後から上野へ出かけた。 休日だし、バレエ学校の公演ということもあるのだろう、客席にはシニョンに結った女の子が非常に多かった。海の向こうからやってきた同じ志を持った同年代の子供達の舞台をどんな風に観るのだろう。きっと多くの刺激を受けるに違いない。 さて、3部告ャからなる今回の公演、第一部は「ペシェ・ド・ジュネス」。15歳から18歳、上級生の生徒達・総勢11組の男女が、パ・ド・ドゥやアンサンブルを繰り広げる筋のないネオ・クラシックの作品だ。年齢の幅もあるのだろう、身長や体格に差がある。アンサンブルでは、フォーメーションがずれる場面もあったが、群舞を揃えるというよりは、一つ一つのテクニックやポジションを正確に、きっちりやりきる、ということが優先されているのだろう。バレエ学校の公演なのだから、それはそれで良いと思った。何よりも、一人一人が、今、自分のできること精一杯やっている、そのひたむきな阜サに好感が持てた。若さからくる純粋なひたむきさに魅せられたのかもしれない。 2つめの作品は「スカラムーシュ」。ジョゼ・マルティネスが低学年生のために振り付けたというこの作品は、なるほど、狂言回しのスカラムーシュ役を演じたエティエンヌ・フェレール君が18歳である以外、11歳から13歳の低学年生が中心で、中には10歳の生徒もいる。女子はポアントを履いていないし、難しいテクニックをやるわけではないが、子供らしい、くったくのない笑顔と、はじけるような元気さで大変楽しい作品だった。コロンビーヌやアルルカンといった賑やかで個性的な登場人物、チュチュを着たネズミに扮したキュートな女子生徒達のコミカルな動き、あどけない撫?ェ残るバレリーナ役の女の子達が、ジゼルやバヤデールのフレーズで見せるちょっと大人びた撫?……等、まるでおもちゃ箱をひっくり返したような、子供達が作り出す独特の世界がなんとも賑やかでほほえましい。また、どの子からも、お客様に「観せる」意識が感じられ、既にエンターテイナーとしての根性が座っていいて、思わず「流石!」と唸ってしまった。 最後の作品はノイマイヤーによる「ヨンダーリング」。ノイマイヤーをして「このバレエを踊ることができるは、最も優れた学校の生徒達だけです。」と言わしめている作品。大人の完成されたダンサーではなく、熱気に満ち、エネルギーに溢れ、理想を追い求めている若いダンサーたちにこそ、ふさわしい作品というわけだ。出演しているのは、15歳~18歳の上級生。女子は髪をおろし、カントリー風の生なり色のワンピースに男子はやはり生なり色のサスペンダー付きパンツといういでたち。音楽にはスティーブン・フォスターのボーカル付きのアメリカ民謡を使い、ノイマイヤーらしい、メロディーの流れをそのまま阜サしたようななめらかな動きが観ていて心地よい。ちょっと甘酸っぱいような、男女のパ・ド・ドゥがあったり、男同士のアンサンブルがあったり、それが、本当にフレッシュで瑞々しい。洗練されたプロのダンサーの踊りも素晴らしいけれど、この若さのダンサー達にしかできない、あふれ出るようなエネルギーが感じられる舞台だった。 以前にパリ・オペラ座バレエ学校の日本公演を観たのは1989年。もう20年も前の話だ。当時の公演パンフレットを出してみると、女子生徒の中に、オーレリ・デュポン、男子生徒の中にはベンジャミン・ペッシュの名前があった。今回の来日メンバーの中にも、きっと未来のエトワールがいるに違いない。小さな蕾が大輪の花を咲かせるのが今から楽しみだ。 投稿ナビゲーション 連休前夜訃報